耐震性不足は「正当事由」/UR高幡台団地訴訟で判決

 耐震性を満たさない賃貸住宅の立ち退きをめぐり、建物を所有する都市再生機構(UR)が入居者を訴えていた裁判で、東京地裁は3月28日、URが主張する正当事由を認め、賃借人に退去を求める判決を言い渡した。耐震性を理由とする建物明け渡し訴訟で貸主側が勝訴するのは初めて。同様の問題を抱える賃貸住宅や賃貸ビルは多く、今回の判決は先駆的事例として注目を集めそうだ。
  
 訴訟の舞台となったのは、URが所有する高幡台団地73号棟(東京都日野市)。鉄筋コンクリート11階建て・250戸の同物件は築30年以上が経過しており、現行の耐震基準を大きく下回っていた。

 URは当初、耐震改修による再生を検討したが、費用負担が大きいこと、改修しても機能性が損なわれることなどから2008年に解体を決定。200人超の賃借人に対し移転の協力を求める中で、移転を拒否した7世帯を被告として11年に東京地裁に提訴した。

 裁判では、耐震性不足が借地借家法に定める正当事由にあたるかが争点となっていた。家主が賃借人に退去を求める際に必要な正当事由に明確な定義はない。過去には建物の老朽化や賃料の滞納などで認められてきたが、耐震性を理由とする判例はこれまでになかった。

 東京地裁が3月28日に下した判決では、URが入居者に対して実施した移転先のあっ旋や引越しなど費用の支払いについて、「退去に伴う経済的負担等に十分に配慮した手厚い内容」と評価。

 その上で、「正当事由が認められ、明け渡しを求めることができる」とした。被告に対しては、明け渡しのほか、建物を明け渡すまでの違約金として1カ月当たり賃料相当額の1・5倍を支払うこと、訴訟費用を負担することを命令した。被告の上告の有無にかかわらず判決を仮に執行することも認めた。

 URは判決について、「建物の耐震改修を検討するにあたって、賃貸人のみが過分な負担を強いられる場合には、賃借人に十分配慮することで建物明け渡しが認められるという重要な指摘がなされた」とコメント。退去の際に入居者に渡した引越し費用などの詳細は非公表としている。


公開日: 2013年4月16日