昭和60年前後の猛烈な地上げによって空き地や空き家が虫食い状態に残り、都心にありながら一時は街が崩壊寸前まで追い詰められた東京都新宿区の西富久地区の再開発が、住民の勉強会開始から約20年を経て、6月15日にようやく着工を迎えた。
約90人の地権者と野村不動産をはじめとするデベロッパー4社が参加組合員として参画する再開発組合は、高さ180メートル・55階建てのタワーマンションを中心に住宅1240戸と大型スーパーを誘致する業務商業施設や大広場などを建設。デベロッパー4社は約1000戸の保留床を取得して今後分譲する。
マンションを分譲するのは野村不動産、三井不動産レジデンシャル、積水ハウス、阪急不動産の4社。山手線内側で最も高くなる55階建てのタワー棟には最新の防災機能を盛り込んだ。
西富久地区市街地再開発事業は、地下鉄新宿御苑から徒歩5分に立地。虫食い状態の空き家の不審火や盗難などが相次ぐバブル崩壊後の状態に危機感を抱いた住民有志が90年から街づくりの勉強会を始め、近くの早大の協力も得ながら97年には9割以上の賛同を得て住民主導の「まちづくり組合」を結成した。
再開発では、もともと戸建て住まいが多かった住民ニーズに応えるために、低層の商業・業務施設棟の上に人工地盤を築いて戸建て感覚で生活が送れる住民用のペントハウス22戸を建設。さらに、7階建ての賃貸ワンルーム約120戸も建設し、住民が自宅の床面積を減らす見返りとして取得する賃貸住宅の賃料を、マンション住まいで発生する管理費や積立金の支払いに充当できるようにするなどして合意にこぎつけた。