「仮住まい」で日本をつなげ。東日本巨大地震の被災者にさまざまな形で住まいを提供しようと、関西と首都圏の建築・不動産事業者が独自の取り組みを進めている。
「仮り住まいの輪」と名づけられたこのプロジェクトは、一時的な住まいを探している被災者と住宅や空きスペースを提供したい個人(または事業者)とをインターネット上で結びつける試み。一般的な賃貸住宅だけでなく、「自宅の空き部屋を3週間貸したい」といった限定的な情報も募る。3月下旬に立ち上げ予定のホームページ上で、ユーザーが直接賃貸(賃借)ニーズを登録する。
賃借人は、賃貸人が登録した物件に申込めるほか「こんな部屋を借りたい」という希望条件も登録できる。被災地にいる親類を呼び寄せたい利用者が被災者に代わって登録することもできる。賃貸借契約は原則として自己責任に基づいて当事者が交わす。紛争を未然に防ぐための物件掲載ガイドラインや契約のための書類などはホームページに掲出して利用者をサポートする。
利用者の善意に頼る部分が多いが、ホームページでは賃貸人(賃借人)のプロフィールを充実するなど「ユーザーの顔」が見えるインターフェースを導入することで利用者に安心を訴える。物件情報のほか、物資やサービスなど住宅以外の支援の申し出も登録できるようにする。今後、ツイッターなどのソーシャルメディアで告知し、4月にはホームページへの物件登録をスタートしたい考え。
「仮り住まいの輪」プロジェクトはアートアンドクラフト(大阪市)の中谷ノボル氏が発起人となって設立。リノベーション住宅推進協議会や住宅・不動産業有志でつくるハ会メンバーなど10社以上が参画している。
今回の震災では34万戸の被災者用住宅が必要となる見通し。政府は仮設住宅の建設など対応を急いでいるが住宅不足が深刻化する懸念も指摘されている。そのため、同プロジェクト以外にも、賃貸管理会社でつくる団体や不動産オーナーなどが空き物件を提供する動きが広がっている。