S&P/東日本巨大地震で、裏付け資産の被災状況把握を急ぐ

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、甚大な被害をもたらした東日本巨大地震を受け、裏付け資産に直接の影響を受ける証券化案件も一部あるとし、特定を急いでいる。15日、サービサーなどの案件当事者が裏付け資産の被災状況を把握するまでには一定の時間が必要と考えていると発表した。

 同社は、裏付け資産の被災状況とその影響度に関する情報を考慮し、今後のパフォーマンスの見通しを分析したうえで、案件の仕組みや信用補完の水準を踏まえ、各案件の格付けへの影響を個別に検討する。

 アセットクラス別でみると、商業用不動産に裏付けられるCMBSや住宅・賃貸アパートローンに裏付けられるRMBSがより直接的な影響を受けやすいとしたものの、宮城、岩手、福島の3県の県内総生産と総人口はいずれも、日本全体に占める割合が計5%弱であることから、CMBSやRMBS案件の裏付け資産におけるシェアは一般的に小さいとの見通しを示し、裏付け資産プールが地理的に分散している案件は、影響は限定的なものにとどまると予想。一方で、今回の地震は、証券化対象資産の多くが所在する首都圏でも大きな揺れが観測されていることから、特に裏付け資産の分散度が低いCMBSと、アパートローンを裏付けとするRMBSは、案件のパフォーマンスに直接的な影響が及ぶ可能性を指摘した。

 裏付け不動産に大きな被害が発生したことが確認された場合は、その物件の改修にかかる費用と期間、保険付保範囲、借入人の費用負担の意思と能力などを確認し、案件の準備金や流動性補完の仕組みなどを考慮したうえで、格付けへの影響を個別に検討する。

 このほか、今回の巨大地震によって発生した福島原子力発電所の事故と首都圏への電力供給不足により、証券化案件は間接的に影響を受ける可能性があるため、今後のパフォーマンスの変化についても注視する必要があるとした。


公開日: 2011年3月16日