森ビルは、森稔社長が代表権のある会長に就き、辻慎吾副社長が社長に昇格するトップ交代を内定した。6月の定時株主総会を経て正式決定する。辻氏は森ビル生え抜きで、60年生まれの50歳。76歳になった森氏から一気に若返りを図ることで、長い時間を必要とする再開発型の街づくりという森ビルのビジネスが、将来にわたって継続・発展することのできる組織体制を早期に整える。親子2代にわたって創業家の強いリーダーシップで事業を推進してきた森ビルは今後、組織経営に移行する。
創業家以外の社長は初めて。記者会見した森社長は「すでに森ビルは社会的存在であり、経営者は森家にこだわることはない」と述べ、六本木ヒルズなどの再開発に一貫して携わってきた辻副社長が、森ビルの街づくりのビジョン継承をはじめ事業遂行力やマネジメント能力といった後継者に望んだ条件を最も満たしていた、と今回の次期社長指名が「ごく自然な選択だった」ことを明らかにした。
辻副社長は、権利者が400人にも及んだ六本木ヒルズ再開発をまとめ上げ、その後も様々な機能が複合したヒルズを一つの街としてコーディネートしながら情報発信を続けることで街の付加価値を高める、従来型の受身の管理とは一線を画したタウンマネジメントの街づくり手法を確立した実績を持つ。
会見では「アジア諸都市に遅れを取りつつある東京が抱える課題を解決することが森ビルの存在意義」だと、タウンマネジメントからより広範囲なエリアマネジメントの実現に意欲を示すとともに、「これまで進めてきた立体複合都市の促進や、海外展開の加速を組織として進めていきたい」と抱負を述べた。
辻慎吾氏は、85年横浜国大大学院建築学専攻卒、同年に森ビル入社、06年取締役、08年常務、09年副社長。広島県出身。