米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは9月13日、日本の大手不動産会社と不動産投資法人(Jリート)の向こう12~18カ月の見通しをネガティブから安定的に変更すると発表した。足元は、先進国経済の減速や円高などにより、景気の改善速度に対する不透明感があるが、日本経済は緩やかながらも回復基調にあり、不動産市況も底を打ちつつあると判断した。
例えば、08年以降上昇が続いていた東京都心部のオフィス空室率はピークを迎えつつあり、市場の募集賃料の低下ペースが鈍化している点を挙げた。11~12年にオフィス供給が増加し、空室率が高止まりするリスクがあるため、急速な改善を期待するのは時期尚早であるが、需要も回復基調でオフィス賃貸市場悪化の可能性は低いとみている。地方都市も、需要の回復が都心と比べて遅れているが、底打ちの兆しがみられると指摘。
商業施設は、雇用や賃金の動向は依然として厳しいが、一部で個人消費の持直しがみられ、小売店売上のマイナス幅も縮小傾向にあるとした。ただ、個別商業施設ごとの競争力の差は開き、さらに店舗の淘汰は進むとした。
賃貸住宅市場は、稼働率や賃貸条件が安定化してきたと分析。分譲マンション市場も、減税や低金利政策等の効果で首都圏を中心に需要が改善、価格も安定的に推移している。
不動産投資市場は、不動産価格の下落の影響で売り物件と取引件数がともに少ないものの、新たにアジアを中心とした海外からの不動産投資マネーの流入があることに加え、金融機関の貸し出しや資本市場からの資金調達が改善していることで、今後、徐々に取引が増加する可能性が高いとした。
Jリートは、不動産安定化ファンドの設立を契機に資金流入が徐々に好転し、セクター全体として資産拡大の動きが復活するなど資金調達環境の改善が進んでいる。合併や新規物件取得によってポートフォリオの厚みが増す発行体が増える見立て。加えて、資産売却や増資が活発化してきたことでレバレッジ管理の柔軟性が増加するとして、ポートフォリオからの収益やレバレッジを含む財務面での改善が見込まれ、安定的に推移するとした。